氷川神社と白蛇

東京都足立区


舎人・入谷・遊馬三村の鎮守とされた氷川神社は正治二年勧請の由緒ある社だ。昔、この境内に神様のお使いといわれる白蛇が棲んでおり、たまに姿を現しては珍しがられていた。

しかし、この白蛇が現れた時は、決まって大雨大風などただならないことが起こるのだった。このことに気づいた村人たちは、白蛇の姿を見かけると、お互いに知らせあい、色々養生をして天災に備えるようになった。

おかげで、舎人村では天災による被害は比較的に軽く、他より少なかったという。そのようなわけで、氷川神社の白蛇は皆に大事にされていた。舎人から氷川神社を勧請した入谷の氷川神社でもやはり白蛇の同じような話が伝えられている。

『続・足立の語り伝え 六十六話』
加藤敏夫(足立区教育委員会)より要約

追記

舎人ライナーの終点見沼代親水公園駅の南西側に舎人氷川神社はある。ライナー線の東側にも毛長川と諏訪神社の蛇や鰻の話が見えるが、一連のイメージでとらえられていたものかもしれない。氷川神社境内社には弁天さんもあるが、話を見る限りは「氷川さんの白蛇」であるようだ。

これはここ舎人に限ったものではなく、氷川さんのお使いといったら蛇だ、という話はままある。まずは、そういった氷川さまの蛇の一例である、という話だ。

天災を告げる蛇である、という点にも注目しておきたい。蛇が嵐を予告するのはどこでもそうではあるが、もし雨風以外の災害も予告していたとしたら、少々気にしたいものになる。板橋の氷川町のほうに、その池の白なまずが地震を予告した、という話があるが(「氷川池の白なまず」)、とてもよく似た感覚を覚える。