龍の枕石

埼玉県比企郡吉見町


龍の枕石は市の川の橋下、室戸の霊石と並んで河中にあったが、河川改修で失われた。天正十八年前田利家の大軍によって松山城は落とされた。城主・上田朝広は小田原におり留守で、重臣の切腹を迫る利家に、朝広の娘・祐姫が、自分一人の命で家臣を助けてほしいと、と願い出た。

利家はこれを聞き入れ、祐姫は市の川に入水した。そしてそのまま龍神と化し、川底深くに棲みついた。この龍が枕とした石が龍の枕石であったとも、蛇体となった姫が石と化した蛇体石といったともいう。また、入水し龍となったのは城主の妻であったともいうが、その際川の水を濁らせたなどという。

『埼玉県伝説集成・上』韮塚一三郎
(北辰図書出版)より要約

追記

各地に落城の折に入水し竜蛇や鰻になる姫の話があるが、その一例として引いた。また、これも各地にある竜蛇の「枕石」の話でもあるが、詳細はまた。