佐白山の雷神
茨城県笠間市
昔、佐白山には「おたけのじょう」という名の雷神が住んでいた。その威勢は強く、底深い穴から出て空に昇り、雲を呼んで一声叫ぶと日光や筑波山の雷はたちまち鳴りを潜めたという。佐白山の社は、この「おたけのじょう」を祀ったのだともいわれる。後の笠間城の天守櫓の下に、この雷神の穴の跡があったと伝えられている。（『聚成笠間誌』から）
『笠間市の昔ばなし』笠間文化財愛護協会
（筑波書林）より要約
追記
社というのは式内：佐志能神社の論社である同名社で、笠間城天守のあった山頂にある。私が参った時は震災のすぐ後で、石垣が崩れていた。今思えば、その「雷神の穴」の露出する寸前だったのかもしれない。
雷を「おたけのじょう」と呼ぶのは、鹿嶋の武甕槌・建御雷神を思わせるものがあり面白い。しかし、ここの重要な点は、同じ所に大蛇の伝説も語られるところにある。
天守櫓の下におたけのじょうの穴の跡があったというのだが、その天守櫓には大うわばみが出て退治されたといい、実に天守櫓が崩れた際に、その下から骨が山のように出たというのだ（「佐白山の大蛇退治」）。
雷と竜蛇が同一視される気風が強くあったか否かは、この北にある朝房山を風土記の晡時臥山と見たときの、その神の子の蛇を祀ったという話を考える上で非常に重要となる。