シャジホコ

宮城県宮城郡七ヶ浜町


シャジホコという魚は蛇のように長いが、赤青緑黄などと体が光り輝いてきれいなものである。体は五、六十センチぐらいで、太さは四、五センチぐらいで、底に潜ったり海面に現れたりする。

尾は鰻のようになっていて、この尾を二、三センチ切って身に付けていると大漁になり、一生金には不自由しないという言い伝えがある。船上尾を切る時は、船霊様の納まるオモテのタツの上で行う。普段は神聖な所で作業は禁じられているが、シャジホコは神の使いであるので、タツで切るのだ。

このシャジホコの尻尾を宝物としている二人の爺がいたが、時化にもあわず、いつも漁が多かった。ところが、治太爺という人は、欲張って尻尾を切りすぎて、シャジホコを殺してしまった。爺は大きな屋敷を持っていたが、漁をなくして財を失い、山のほうへ移ってしまったそうな。シャジホコは殺さず海へ帰さないといけない。

暖かい海の魚で銚子沖で一回と、カツオ船で金華山沖での二回見ただけであり、タモ(網)ですくおうとしたが逃げられてしまった。あまり見ることが少ないので人々には知られていない。(小玉敏「漁村生活の一考察」)

『漁撈伝承』川島秀一
(法政大学出版局)より要約

追記

松島湾の南に突き出た七ヶ浜町での話。同書の山の猟師・海の漁師に富をもたらすいろいろの呪物の話の中に出てくるシャジホコの話。シャチフクという蛇のような魚を船霊様の前に遊ばせておくなどという話もあるが、詳しくはさておく。

ここでは、海蛇らしきものが漁をもたらす存在として信仰されていた事例として引いた。相模のほうから参考とする(「シャチ」)。相模のほうでは出雲の竜蛇様のことであるような感じなのだが、この三陸の海の「尻尾」へのこだわりにはまた違った感覚が伺える。