如意珠と青大将

韓国・江原道原州郡

昔、若者が小便をしようと畑に行くと、雉が飛べずにもがいていた。蛇に咬まれたようだったので、持ち帰って料理し妻と一緒に食べた。すると妻がすぐに妊娠したので、生まれた子は雄雉と名付けられた。

その雄雉が成長して、結婚しようというとき、新婦の家に向かう途中の峠で、名を呼ばれた。声のするほうへ行くと洞窟があり、大きな青大将がいて、お前は自分の獲物であった雉で生まれたのだから、生かしておくわけにはいかない、と雄雉青年を呑もうとした。

しかし、結婚式の日に私を食うとはあんまりだという、雄雉の訴えに、青大将は一日だけの猶予をくれた。こうして雄雉は結婚式を挙げることができたが、新婦はその新郎の浮かない顔の訳を聞くと、自分が一緒について行くから心配しないよう言った。

青大将の前にきた新婦は、この若者が私の夫である以上、私が一生食べていくことを保証しないなら、夫は渡せない、と宣言した。青大将はこれに納得し、自分の口の中の奇麗な珠を新婦にとらせ、これをやろうと言った。

珠には四つの穴があり、新婦が使い方を聞くと、穴に向かって必要なことを言うと、何でも出てくるのだ、と青大将は三つ目の穴のことまでは教えた。しかし、四つ目の穴のことを言わないので、新婦が問い詰めると、青大将は仕方なく、それは穴に名を言えばだれでも殺せる穴なのだ、と言った。

新婦は青大将の言葉が終るや否や、四つ目の穴に向かって「青大将、死ね」と叫び、青大将はその場で死んでしまった。雄雉青年の命は助かり、二人は村に戻って幸せに暮らしたという。

崔仁鶴・厳鎔姫『韓国昔話集成3』
(悠書館)より要約

江原道原城郡(今の原州郡)で採取されたとあるが、この話は昔話として、各地でよく語られるもののようだ。同資料次の話では、蛇が虎に代わって同じように語られている。ちなみに、夫を食べられそうになる妻が、一生の食いぶちを保証しろと怪物に迫るのは常套の策のようだ。