イシミの大蛇の夜光珠

韓国・慶尚北道蔚珍郡

蔚珍郡近南面九山里には、有名な聖留窟があるが、昔はこの洞窟にイシミという大蛇がおり、近寄る人は命を失うといわれていた。大蛇は龍となって昇天しようとその日を洞窟の中で待っていたのだが、人に見られると龍になれなくなるので、人を近付けなかったのだ。

ある時、隣村の洪という壮士が龍になろうとする大蛇の口の中にある夜光珠を得ようとたくらみ、クヌギの棒を手に洞窟に赴いた。夜光珠があれば願いがかなうと言われていたからだ。しかし、彼は出会うなりおろちにひと呑みにされてしまった。

この時運良くクヌギの棒がおろちの喉につかえ、力士は呑まれずに大蛇の喉の中をうかがうことができた。ところが、そこにあった夜光珠はできたばかりのもので、何の役にも立たないと知った力士は、どうにか大蛇の口から逃げ出して帰った。その後、洪は病気にかかって長く病んで死んだ。大蛇の方は龍となって昇天したという。

崔仁鶴・厳鎔姫『韓国昔話集成3 本格昔話(2)』
(悠書館)より要約