甲賀三郎・枝話

長野県北佐久郡御代田町

いま大沼の池の北東に三個の大石があって、その割れている所から諏訪明神が出現したのであるという。池畔に二本の大きな楓があるが、これは池中にあったとき眺めたので、眺めの楓といっている。(寺伝)

浅間山は甲賀三郎の妻、富士山は妹、共に甲賀三郎を訪ねてきて、土産として妻は養蚕、妹は絹糸を持参したという。(土屋勝平60)

蓼科山中に神龍の洞というのがあって、年中天龍が井戸に下り八月洞に帰る。むかし甲賀三郎というりっぱな男子が、この洞に入ったといい伝えられている。(立科山略伝記)

御代田町清万から、佐久市長土呂の近津までの沢を(巾八間・約十五メートル深さ二間・約四メートルぐらい)蛇堀りといっているが、真楽寺の大蛇が通ってこれを掘ったのだといわれている。(里老)

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 北佐久篇』
(佐久教育会)より

殊に、浅間山との関係は要注目だろう。それは三郎が帰還した真楽寺が別当とするものであり、山号でもある。そこに妻や妹(おそらくは木花咲耶姫との混同)とあり、山の姉妹神の話のようでもあり、さらに養蚕をもたらした姫のモチーフまで入っている(富士と筑波か)。