たたる蛇 長野県上田市 ある時、真田のある爺さんが畑の石垣から出てきた蛇をしょっつかめようとすると、尾が切れて蛇は穴に入ってしまった。困って石垣を崩しても、もう蛇はいなかった。 きびが悪くなって家に帰ると、孫娘が眼をすえて、おっかねいおっかねいとおびえて泣いている。なんとしてもおさまらないので、易者に見てもらうと、蛇が祟っているというので除けてもらうと、すぐに治った。 箱山貴太郎『上田市付近の伝承』（上田小県資料刊行会）より要約 このあたりでは、かくのごとく蛇を害した祟りにあう、という話が多い。引いた話では祀ったとはないが、その多くが祀られている（「うちの原の大蛇」など）。ただ、それが何といって祀られているのかがどれも書かれていないのだが。 ちなみに、これが蛇の執念深さを恐れた土地だった、というのかというとそういうわけでもない。中に、別段蛇を害したわけではないのに祀るという話もままあるからだ（「蛇の祠」）。 そうなると、そもそも屋敷神などとしてよく蛇を祀った土地であって、その意味合いが忘れられていく過程で「それを祀ったのは祟りがあったからだ」という筋が強調されてきたのではないか、とも思える（「土蔵の中の怪音」なども参照）。 ツイート