桐原のある家の祖父の代のこと。邸内土蔵の中から鼾のような怪しい物音が聞こえ、連夜続くので村中の評判となった。それで人も集まるので、主人が神職を頼んで祈祷をし、神がかりしてもらうと、蛇が出た。
曰く、自分は蛇で、塩田の某家に住んでいたが、取毀されたので移り住んだ、どうか蛇石として祭って供養してもらいたい、という。そこで主人がそのようにしたら怪音はぱったり止んだ。
その時から土蔵の中に小祠を建てて蛇を祭り、土蔵は何物も納めずに空けて置いた。改築の必要があった際も、神職を迎え祭を行い、屋敷内の他の場所に遷座して今に至るまで祭を欠かしていないという。