おとらのがれ

山梨県南巨摩郡身延町

下山から身延奥の院へ通じる道に「おとらのがれ」というところがある。
昔下山の里におとらという美女が住んでいた。ある日、おとらは奥の院に参詣し、そこの若僧と相思の仲となった。以来おとらは、雨雪もいとわず、毎夜五十余町の急坂を登って若僧と逢曳を続けた。若僧は、このおとらの情熱に恐れを感じ、ある夜女の帰りを送って行きながら、高いがれ(崖)の上から女を谷底へ突き落とした。その後、夜分にそのがれの付近を通ると、おとらの泣き声が聞こえるという評判がたち、若僧も得体の知れない病気にかかって死んだということである。(「甲斐伝説集」)

『身延町誌』より

身延町立図書館webサイト「身延の民話」