遠い昔、印旛沼一帯に雨がまったく降らなくなり、続く日照りに飢えで死ぬ者もあった。これを知った天皇は、釈明というお坊さんに雨乞いを執り行うよう命じ、釈明は印旛沼へ来ると船を漕ぎだし、沼の真ん中で龍神への祈祷を行った。
それは三日にわたる命がけの祈祷だったが、その三日目の日没、ものすごい波の音とともに沼の中から龍神が現れ、暮れゆく空に姿を消した。と、すぐさま真黒の雲が舞い上がり、雷鳴とどろく中、大粒の雨が降り出した。田畑は生き返り、人々は狂喜した。
しかし、七日目のこと。雨と雷が続いていたが、そのうちに天も地も吹っ飛ぶような雷鳴がとどろき渡った。そして、人々はそこに三つに裂けた龍の姿を見たのだった。皆は自分たちの身代わりになって裂けた龍を思い悲しみ泣き叫び、その三つに裂け落ちた龍の体を捜しにでかけた。
すると、二本の角がある頭が安食に、腹は本埜に、尾は大寺に落ちているのが見つかった。頭部は唐櫃に納め龍角寺に埋められ、腹は本埜の地蔵堂に納められ、尾は大寺の寺に納められた。これが龍角寺・龍腹寺・龍尾寺それぞれの名の由来となった。(房総の民話・千葉県の歴史・北総誌史)