囃子水の竜神

千葉県鎌ヶ谷市

昔、婆さと孫が野良に出かけ、雨に降られて笠と蓑を着、七面様の下の泉近くの納屋で雨宿りをしていた。雨はすぐ止むと婆さがいうので、孫も泉に降る雨を見ながら腹を空かせてまっていたが、そのうち気づいたことがあった。

泉の水面に映る影が、いろいろな形に見えるのだ。笠のように見えたので婆さにも訊くと、婆さもそう見えるという。面白がって婆さが「笠になれ」と囃し立てると、泉から水が吹き上げ笠の形になった。今度は「蓑になれ」と囃すと、吹上げる水が蓑の形になる。

二人で盛んに面白がっていたその時、雷が鳴り、稲妻が光った。そして、水面から竜が頭を持ち上げ、泉の上にある七面大明神のお堂に目を向け、首を振っていた。婆さは、囃子水の守り神じゃ、と竜神に手を合わせた。雨があがると、竜神の化身はどこにも見当たらなかったという。

石井文隆『鎌ヶ谷の民話』(文京書房)より要約

そして、七面堂が今も池の北東側にあるが、これによって守護の竜神の池でもある、という話がまたあり、引いた話はその両方を語る結構になっている。しかし、池の竜が七面堂の本体かというとまた違う面もある。