藩主の息子と道元の娘 群馬県伊勢崎市 高崎藩の藩主の息子と赤堀道元の娘とが恋をした。先方は殿様、こちらは平民で、身分がちがいすぎるというので、赤堀家の方で反対であった。娘がそれを悲観して、赤城の小沼へ行って身を投げてしまった。赤堀家は造り酒屋であって、番頭さんが小沼まで迎えに行ったら、娘は蛇になってでてきて、「家へ帰ってくれ」と、番頭さんにいってまた、沼へ入ってしまったという。(伝承者 大山恒雄) 『日本伝説大系5』(みずうみ書房)より 赤堀道元の娘が蛇になり赤城小沼に入水した、という伝説群には、怪異が後退し、赤堀の娘が殿様に連れ去られたので、あるいは懸想されたので、蛇の伝説を語って隠したのだ、という筋も散見される(「殿様に懸想された道元の娘」)。 この藩主の息子との悲恋もそういった話のひとつといえるが、一応その無念から蛇になったのだという蛇体の話にもなっている。しかし、この幕では娘が蛇になった意味がない。 おそらく、より一般的な蛇体となる話(「赤堀道元の娘」)がありきで、その筋を村里の(赤堀の家と関係のない)人々が興味を持つようなものへと再編集した結果ではないかと思える。 ツイート