紫肝 福島県東白川郡鮫川村 元日生まれの人は紫肝だという。紫肝の人は鮫に狙われるので、船に乗ってはいけない。相馬の殿様が磐城の海で船に乗ったのだけれど、紫肝だったので、ねらわれた。弓を撃って、それで難を逃れたのだけれど、鮫川橋のところで鮫が海から上がってきてまで追いかけてきたという。それで鮫川橋という。 ざっと昔を聴く会『東白川郷のざっと昔』(ふるさと企画)より要約 原題は「鮫川村の由来」なのだけれど、橋の名の由来しか語ってはいないので、特異なモチーフである紫肝のタイトルとした。同地域ではこの紫肝の持ちヌシは蛇に魅入られたり河童に引かれたり鮫に狙われたりなど、散々な目に合うようだ(元日に限らず節句の日に生まれたもの、ともいう)。 全国的にも紫肝をいう他地域はあるが、多くこのように船に乗っている特定の人物が狙われるのは、恨みを買っているか、魅入られているか、となる。変わったところでは両毛のほうでは「山繭の着物」を着ていると狙われるといった。 ともあれ、相馬の殿様が鮫に狙われた話(多く語られる筋では船には乗らない・「菊田浦の大鮫」)は鮫川村でも語られるのだが、このように紫肝という土地の好みのモチーフによって再構成されたものも語られるということだ。「その鮫」は紫肝を狙う面子の一員である、ということを示してはいる。 ツイート