紫肝

原文

元日生まれの人は、紫肝だという話は聞いたね。胆が紫だって。紫肝の人は船には乗んな、と言う。そうすっと、鮫にねらわれるって。そして、相馬の殿様は船に乗ったそうだね。磐城の浜で。ところが鮫にねらわれて、危いところ、弓を撃って、それで逃げた訳なんだ。そして、鮫川橋を渡ろうとしたところ、鮫が矢を取って追っかけて、海から上がって来たって話あんだね。そんで、あすこは鮫川橋って名をとっている。まあ、ザットムカシかどうだか分かんないけど、そういうことあったって言うね。(相馬の殿様は)紫肝だって。

──その鮫に名前はあったんですか?──

さあ、鮫の名前は聞いていないけど、元旦生まれの人は船に乗るなって、昔の人は言うね。

○下松川字仁田 小玉篤四郎

 

(原題:鮫川村の由来)

ざっと昔を聴く会『東白川郷のざっと昔』
(ふるさと企画)より