王小(ワンシャオ)という若者が、山の石碑でひとりでに転がる二つの丸石を見つけ、仲の良い「物知り」と呼ばれる老人にそれは「鎮め石」という海の水を引かせる宝だ、と教わった。はたして東の海に行ってみると、本当に海の水が引き、王小は海底の御殿を訪れることになった。
そこでは竜頭の杖を持つ白ひげの老翁・竜王が歓待してくれ、帰る段には何でも欲しいものをくれるという。王小は滞在中にすっかり竜王の三女を好きになっていたので、その娘をください、と言った。竜王はさすがに渋ったが、譲らぬ王小に承知し、王小は竜女を娶って地上に帰った。
ところがある時、県知事が竜女の美しさを知るところとなり、王小にウズラの勝負を挑んできた。県知事のウズラが勝ったら女房をもらうという県知事に王小は困ったが、竜女は自分の里から三番目のウズラをもってくればよいという。王小が竜王のもとへ行くとたくさんのウズラがいたが、三番目のウズラは足が一本で片目のみすぼらしいものだった。
王小は落胆したが、竜女がそれでよいというのでそのウズラで県知事の勝負を受けると、片目のウズラはほんの二三突きで県知事のウズラを殺してしまった。しかし、勝負はあったが県知事は竜女をあきらめられず、今度は役人と兵隊を駆集め、直接竜女を奪いに来た。
竜女はこれにも動ぜず、持ってきた化粧箱の一番上の引き出しを開け大雨を降らせ、二番目の引き出しを開け今度は木枯らしを吹かせ大水を凍らせた。県知事も家来もみな首だけ出して氷漬けになってしまった。そして、最後に竜女は三番目の引き出しからシャベルを持った大男を出し、そのシャベルで県知事と家来たちの首を残らず刎ねてしまった。
中国の竜宮女房。今は本邦神奈川県は小田原市酒匂の方で語られた竜宮女房伝説(「これはこれは」)から参照するためにその筋を載せたが、独自に似た話ができた、とは到底思えない内容といえる。
異なる部分も逆に興味深いだろう。潮干珠を思わせる「鎮め石」自体が面白いが、これによって引く海は、あたかも海水が割れて行くような雰囲気に描かれている。このあたりは、中国での山中の異界に入っていく雰囲気とも一脈通じている。また、三番目の娘といい、三番目のウズラといい、「三番目」が重要だという点も見逃せない。