蛇聟入

鹿児島県大島郡知名町

シン長者には三人の娘がいた。末娘が十五のときに母が死に、十七日の忌払い薪を取りに長者の父が山へ行った。しかし、薪が重いので、担がせてくれる者がいれば娘をやるが、と言ってしまった。すると、アマタ(蛇)が担がせてくれた。

帰った父が心配で布団をかぶっていると、娘たちがわけを聞いたが、長女と次女は断ったが、末娘が蛇の娘になることを承諾した。こうして末娘は蛇の妻となったが、人の姿になった蛇の男が大変立派な男だったので、姉は妹を連れ出し溜池に入らせて殺し、自分が妹の着物を着て蛇の妻に成りすました。

ところが、死んだ妹が鳥となって邪魔をするので、姉は鳥を殺させ豚小屋に捨てた。すると今度はそこから桑が生え、夫と姉がくるとじゃれて邪魔をしたので、桑も切らせ焼かせたが、その火が飛んで姉の目を焼いた。盲目となった姉は、崩れかかった豚小屋の石垣につぶされて死んだ。

それから、夫の夢に妹が出てきて、溜池の穴の中に死んでいるから、桑の灰をかけてくれ、と言った。夫が行って、生きているような死体に灰をかけると、妹は生き返ってわけを話し、姉をその穴に埋めて、二人は元通り夫婦となって一緒に暮らした。

『日本昔話通観25』より要約

東シナ海文化圏から東南アジアのほうにあっては、蛇聟というのはこのようなシンデレラストーリーであるのがもっぱらであり、本邦本土の蛇聟が異質なのだといえる。この話には見えないが、蛇は多く、その皮を脱いで、人の美丈夫として妹と夫婦になる。

なぜその点が本土でかなり徹底的に避けられたのかは難しいが(神婚譚の結構の話でさえ、こうはならない)、こうして見るとおり、奄美のほうにはアジア的な(あるいは世界的な)この典型の筋が語られているということだ。