竜宮女房

鹿児島県大島郡喜界町

七人家族だったが次々死んでしまい、老いた母と息子だけになった不幸な家があった。息子は山の花を売って細々と暮らしていた。ある日、売れ残った花を竜宮(ねいんや)へ送ろうと、息子は花を海へ投げ込んだ。すると、大亀が現れて、正月の花になった、竜王が礼をする、と息子を背に乗せて竜宮へ向かった。

途中亀は、竜王が欲しいものを問うたら、その娘こそを欲しいというように、と息子にいった。それは立派な竜宮で息子は三日間歓待され、母が待つので帰る、というと竜王は欲しいものを問うてきた。息子は亀に言われたとおりに竜王の娘が欲しいといった。竜王は娘は一番の宝だが、といいつつも、息子の嫁にしてくれた。

息子と嫁が地上に帰ると、三年が経っており、母は飢えて死んでいた。息子は嘆き悲しんだが、嫁が竜宮から持ってきた「生き鞭」で母の死体に水をかけなでると生き返り、三撫でする間にはすっかり元の母に戻った。さらに嫁は「うっちん(打ち出の)小槌」で立派な家も建て米も出し、三人は大金持ちになった。

ところがこの嫁の美しさを知った殿様が、自分のものとしようと息子に難題をかけてきた。千石の米を用意しろ、千尋の縄を用意しろと無理をいってきたが、これらも嫁が海からそれらを差し招いてくれた。それでも諦めない殿様は、最後に自ら六百九十九人の家来にまぎれて、息子の家に赴いた。

殿様は、嫁に芸をするように命じた。嫁は小箱から何百人もの小人を出して見せ、それらに見事な舞を躍らせた。そして、最後には何百人という刀を持った小人が出てきて、殿様も家来もみな切り殺し、死体は海に押し流してしまった。

関敬吾『日本昔話集成』
(角川書店・昭25)より要約

少し煩雑な要約だが、話中に出てくるいくつかの数字(七人家族・三日三年三撫・六九九人の家来)はなにか意味があるように思えるので、それが残るようにまとめた。