家の周りに出入りする蛇は、家の先祖様の化身だから殺してはいけないという。ある年、某が川戸にいたヤマカガシを殺してしまった。すると、その二日後から自分と子供が熱病にとりつかれ、ひどく病んだ。
巫女にみてもらうと、蛇が出てきて、俺はお前の家の祖先だ、家に変事がないかと確かめに帰ってきたらお前に殺されてしまった、という。そこで某は深く詫び祈りを上げたところ、子供ともども回復したという。アオダイショウを殺したら病み、亡き母の魂だ、と物知りにいわれたという話もある。
昔はアオダイショウが鼠をくわえて梁の上にいたり、ツバメの巣をねらったりしたが、決して蛇にはさわるなといわれ、静かに追い返したものだった。言えば蛇もわかるのか、向きを変えて川戸に逃げたものだった。