昔、長楽寺の粉川長楽斎は、粉川長者といわれていた。長楽斎は熱心な仏教徒で、薬師堂を建て祀る等した。十六の娘、賀姫(いわいひめ)も信心深く、この薬師に毎朝参拝した。
ところが、この薬師堂の裏山を東に越した所にある青池の大蛇が若者になって薬師堂で毎朝姫を待ち、双方会うのを楽しみとする仲となった。ある日、若者は姫を青池に連れ行き、自分の家はここだといって、姫を抱えて池中に飛び込んでしまった。
しばらくして、姫の死骸が浮いた。長者は大勢を集めて池端で火を焚き、石や鉄を真っ赤に焼いて池中に投げ込んだ。大蛇は苦しみ死んだが、長者は殺生を悔いて、家を寺として出家した。これが長楽寺である。(藤枝町伝説童話集)