紅鰻とタキザワバンバー

静岡県藤枝市

花倉城が落城する際、逃げ出した姫が烏帽子形山まで来たが、滝沢の十三段の滝の真ん中の滝壺に落ちて落命した。やがて、口紅をつけた鰻となり、滝壺のヌシとなったという。紅鰻の滝壺の水を掻い出すと雨が降るので、雨乞い垂と呼ぶ。

また、滝ノ谷川の不動峡の上の淵では、逃げた姫のお付の女郎(乳母)が殺されたのだという。その怨念が赤い色をして髭を生やした魚となり、淵のヌシ・女郎淵のタキザワバンバーと呼ばれた。

『藤枝市史 別編 民俗』より要約

これは所謂「花倉の乱」における花倉城落城の折に城落ちした姫が、という話。愛知のほうから東海地方はこういった紅をさした鰻・蛇・蛭という話が並ぶ。落城の姫の残念が、という筋が多いが、必ずしもそうというわけではない。

「たきざわばんばー(滝沢婆)」とは「和名はアカザ。土地ではタキザワバンバーと呼ぶ。髭には毒があり、刺されると腫れる」とあり、鯰のアカザ(赤刺)・アカナマズのこと。これは確かに全身が赤い。