池城 静岡県静岡市葵区 杉尾に池城というて周囲五六町の池があった。池には主がいた、白牛である。或時婦人がこの池で汚物を洗濯した。白牛怒って何れへか失せ漸次水がなくなったという。麓に水神の森がある。(清澤村誌) 小山有言『駿河の伝説』(安川書店・昭18)より NDL 静岡によく見る水のヌシの牛の事例。現在杉尾に池は見えない(どこにあったかわからないということ)。池城という名の意味もわからない。というより、ほとんど山林という土地に見える。ここでは、竜蛇が出てこず、牛だけで話が完結している例として引いた。 もっとも、その筋は竜蛇のそれが牛になっただけという感じではある。なお、ここでは牛が「白」い、という点は覚えておきたい。伊豆真城山の池の牛は赤かった(「池の平」)。一碧湖の牛も赤い。また別には黒牛だったりもするので、牛の色に定番はないといえるだろうか。 ツイート