沢底の蛇の池

長野県上伊那郡辰野町

沢底の山寺に堂平という所があり、昔ここにお寺もあったが、いつの頃からか廃寺になってしまった。
この堂平に蛇の池(じゃのいけ)とよぶ小さいが底無しの池がある。昔、この池に大蛇が住んでいたが、大雷雨で山抜けしたとき、一緒に流れて行衛がわからなくなった。池から七、八間離れたところに蛇ヌケといって、蛇の抜け出した跡だというところがある。この池を掻きまわすと雨が降ると言って、誰も昔から手を出した者がないという。(「郷土」二ノ九号)

『長野県 上伊那誌 民俗篇上』より

笹本政治は『天竜川の災害伝説』(建設省中部地方建設局天竜川上流工事事務所)の中でこの堂平の伝説を蛇抜け事例の第一に置いて紹介し、それが土砂災害であり「蛇が池から(蛇が)抜け出したので蛇抜けになったというのが、蛇抜けという名称からもわかる理解なのです」としている。

なお、国交省の災害伝承のリストによると、この伝説の付記として、平成18年7月に、山寺よりは下流の赤羽というところで土石流が発生した、とある。