蛇の伝説 長野県南佐久郡南牧村 広瀬の北屋敷から北のほうの河原全体が昔は大きな湖水で、大蛇が住んでいた。北屋敷の後家のもとへ毎晩美しい男が訪ねてくるようになったが、糸を通した針を着物に刺してみると、朝その糸は明かり窓から抜けて湖水の中に入っていた。 その後、湖水の北側の岩の上に、針を刺された大きな蛇が日向ぼっこしており、それを見た者が、三尺四方ぐらいの石の上に銃をのせ、蛇を撃ってしまった。それから、その石へ上ったり触ったりすると祟るというので、石宮を刻んで祭ったという。今もその石と石宮はある。 『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』(佐久教育会)より要約 湖水伝説でもあるが、それで水が抜けたとはなっていない。前半は蛇聟の筋で、途中から蛇を害して祟られる話にスライドしてしまっている話。 蛇聟の話というのは、よそ者の男には気をつけろという現実的な教訓を語るものとして近年まで現役であったものなので(「ヒキタのえさで生れた蛇の子」など)、それを撃たれた蛇の恨みの筋が本歌取してしまうというのは面白い。 東信にはそういった蛇を害して祟られ、これを祀るという話が非常に多く(「うちの原の大蛇」など)、この広瀬の話を見ると、それは強力な蛇聟の筋を奪ってしまうほどだ、という印象を受ける。 ツイート