池の窪の主 長野県南佐久郡小海町 小海町土村の新田に池の窪に、昔男池女池と呼ばれた二つの池があった。鬱蒼とした中に、波立つ時など蛇の色が見えるといわれ、近くで働く人たちは夕暮れ前に引き上げるほど恐れられていた。 男池の真中には、どんなに寒い年でも凍らない箇所があり、村人はこれを池の主の呼吸する所だといっていた。主は大蛇で、最初北牧の鍵掛(かぎかけ)の双子池に入り、次に男池に入り、次いで女池に入ったとのことである。 『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』(佐久教育会)より要約 おそらく鍵掛の北、141号線沿いに二タ子池と見える地名が双子池だろう。蓼科山のそれ(「双子池」)とは別のようだ。二タ子池は今は分譲住宅地のように整地されており、池など見えない。 土村は小海駅すぐだが、ここももう池などはありそうもない。不思議な話の内容を見るにつけ惜しい話だ。東信には竜蛇を直接描かずに、見える現象にその面影を語らせるような傾向があるのだろうか(「榛名山の池になった池」など)。 また、移動の経路も要注目だろう。「最初北牧の鍵掛の双子池に入り」というが、入ったならその前があるのだろう。141号を南に遡れば、松原湖がある(「畠山重忠と龍」)。 ツイート