池の窪の主

長野県南佐久郡小海町

小海町土村の新田に池の窪に、昔男池女池と呼ばれた二つの池があった。鬱蒼とした中に、波立つ時など蛇の色が見えるといわれ、近くで働く人たちは夕暮れ前に引き上げるほど恐れられていた。

男池の真中には、どんなに寒い年でも凍らない箇所があり、村人はこれを池の主の呼吸する所だといっていた。主は大蛇で、最初北牧の鍵掛(かぎかけ)の双子池に入り、次に男池に入り、次いで女池に入ったとのことである。

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より要約