津島牛頭天王

長野県南佐久郡小海町

小海町川平の馬場山に牛頭天王の生れたという穴がある。むかし馬場山で草を食べていた馬が片足をここの穴へ踏み落した。馬方が行ってみると、直径二尺(約六〇センチ)やっと人が入れるくらいの底知れない穴であった。後で不思議な穴だというので祈祷した。すると「おれは牛頭天王だ、おれを祭れ、まつらなければ川平をかたっぱしから流してしまうぞ。」という恐しい声が聞えてきた。そこで社を建てお祭りをした。今は氏神様として毎年お祭りをしている。(川平、農、新井新作70)

『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』
(佐久教育会)より

詳細不明。氏神とあるが、現在川平集落には法人社は見えない。しかし、話をみると、穴に住まうものが川平を流すといっているのだから、竜蛇に近しい存在を牛頭天王だと祀った事例のようだ。佐久は穴といったら甲賀三郎の穴だと言い出す土地柄であることを考えられたい。