守り刀の変現 長野県佐久市 望月町春日で昔名主をした人が、家の守り刀を背負って寺大門で少し休んだ。立つときに桐の箱へ入れた守り刀を忘れて、遠くまで行ってからはっと驚いた。ちょうどそこを通りかかったものがあったので、その人に尋ねると、その人は真青になって、「あそこには大蛇が道をふさいでいた。」と話した。そこでその名主は大へん驚いて駆けつけてみた。すると守り刀は元の通りに桐の箱に入っていた。 その刀には、不動明王が彫り付けてあってちっとも錆ていないという。(岩下六太郎15) 『限定復刻版 佐久口碑伝説集 北佐久篇』(佐久教育会)より 望月春日の刀が蛇となる話。寺大門というのがどこかも分からず、家について、刀のその後につてなど、この話以上のことは何もわからない。東信では、小諸のほうにもこの手の話がある(「淡路屋敷の宝刀」)。 興味深いところは不動明王が彫ってあった刀、というところだろう。なるほど不動さんの持つ倶利伽羅剣は龍の剣だ。あるいはこの手の話全般に、そのイメージが底にあるかもしれない。 ツイート