昔、切原の泉龍院裏山は大木が茂っており、十七代目の住職の頃、毎晩その裏の森からものすごい鳴き声をあげて怪物がやって来ることがあった。余りに激しいので男衆に相談し、正体を確かめることにし、百助という番頭が夜物陰から様子をうかがうことにした。
すると、その怪物は世にも恐ろしい大蛇であった。住職はこれは何かの祟りに相違ないと思い、豊川稲荷を裏山に祭り読経した。それからは大蛇は姿を見せないようになり、今でも春秋二回の祭りが行われている。
ところで、最近の住職が石工に命じて、この祠を二十三夜塔とともに山門付近に移したことがあった。それらは中々動かず難儀したというが、動かして間もなく住職の背中に腫れ物ができて没し、石工も死んでしまった。祟りと知って次の住職が元に戻したが、その時は難なく動いたという。