志賀本郷の南に、あまり高くない二つの山がある。右の山はやや高く、木などない草山で、左の山は雑木が至る所繁茂している。昔、この山に二柱の神様がおり、ある時相撲を取って、勝ったほうが領地を受ける約束をした。
すると右の山の神様が力足りずに負けてしまい、残念に思って自分の山の木を残らず伐り倒し、蛇身に変わって山奥に入ってしまった。今でもこの山には、負けた神様の化身の大蛇が住んでいると伝えられている。
詳細は不明。志賀下宿の辺りだろうか。少し端山状の丘が見える。神社などは地図上見えないので、どういった神さまの話なのかもわからない。しかし、巨人伝説の雰囲気はあるだろう。ダイダラボッチらはよく山の高さ比べをして泣いたり笑ったりしているが、この神の相撲にはそういうニュアンスがある。
そしてこの話では、結果負けた「右の山の神」が蛇となっているところが目を引く。もし、感じた通りに巨人伝説であったとしたら、その神(巨人)が蛇になっている、ということになる。巨人伝説と竜蛇伝説の関係を考える際に参照される話となるだろう。
また、蛇になった神の山が禿山となった、というところも要注目だ。蛇の神は時としてその経路をそのようにしてしまう(「大蛇の通った跡」など)。これは巨人伝説にも見られるモチーフで、その点でも覚えておきたい事例。