宝珠の玉をもつ蛇

長野県上田市

昔、兄弟の猟師が山に入ったが獲物がなく、疲れて帰ると、大きな木の上に長さ二丈、同まわりが三四尺もあろうかという大蛇がいた。兄弟がよく見るとその蛇は頭に宝珠の冠を持っていた。弟はあの宝珠の玉は金になる、と撃とうとしたが、兄は不思議の蛇だからや撃たぬが良い、と止めた。

しかし、弟は聞かないで撃ってしまった。当たったかと思うとその蛇は消えてしまい、兄がそれ見たことかとたしなめているうちに、弟の目が見えなくなってしまった。さらに弟を背負って帰るうちに兄もびっこになってしまい、人に助けられてようやく家に帰ったという。

これは蛇の祟りだといわれ、蛇でも特に宝珠の玉をもっているのは殺してはならないという。

箱山貴太郎『上田市付近の伝承』
(上田小県資料刊行会)より要約