三分一

山梨県北杜市

昔は八ヶ岳は随分山崩れがあったものだ。小泉村小荒間地方では此の八ヶ岳の山崩れをおんだし(押出し)と言う。
昔天保の頃八ヶ岳に恐ろしいおんだしがあった。今の三分一(さんぶいち)の泉の辺が中心となり山の様な濁流が押出してきた。濁流にのって一匹の白蛇が山から下り三分一の辺の何処かへ消えた。以来三分一の主は白い蛇であるという。
三分一の湧水口を破壊したり、裏山の木を切ったりすると、白蛇のお怒りにふれると言われている。

『郷土研究 第二輯 第一冊 口碑伝説集』
(北巨摩郡教育会・昭和10)より

甲州の「蛇抜け」の話。北杜市にはまた彼岸蛇という土地があり、そちらでも似たような話が語れるが、今はひとまずこの地方の類型的な話として引けるように上げた。