かためのへび

東京都東村山市

昔、南秋津の氷川様の隣に竜泉寺があった。この寺に片目の丹波法印という偉い修験者がいて、学問知識もあったので、寺子屋を開き、周辺の者に読み書きを教えていた。その他にも、道を直し、橋を架け替えと様々に村を助けた法印だったが、柳瀬橋の架け替え工事の際、基礎の石垣を造っている間に病で亡くなってしまった。

村の人々は法印の死を大層悲しみ、葬ったが、法印は心残りであったのか、その霊がヘビになって、橋のたもとに住み着いたという。柳瀬橋を今の鉄橋に掛け替える際も、石垣の所に大きな片目のヘビがいて、驚かれたが、修験者のヘビがずっと橋を守っていたのだ、と思われた。

池田宗弘『東村山の昔話』
(楡書房)より要約

竜泉寺は廃仏で潰されてもうない。そもそもその秋津鎮守の氷川神社がその竜泉寺の境内社であったという。件の片目の法印という修験者が実在した人なのかどうかは不明。