蛇と船 東京都大田区 蛇は泳ぐので、多摩川に置いてある船に乗り込んできてしまうものだった。船の艫のイザ板というのをまくると、寝床がしまってあるのだが、そこに蛇が入っているのだという。 寝ようと思って寝床を出したら、蛇がとぐろを巻いてるのは、気持ち良かぁない。昔の船は木だからどっからでも蛇は入ってこれた。蛇が船に上がるのは縁起がよくない。船にはよくない。青大将だから何もしないけれど。 大田区教育委員会大田区の文化財 第二十二集『口承文芸(昔話・世間話・伝説)』より要約 六郷の八幡塚のあたりでの話。「六郷神社のお使いひめ」でも、船霊さんは蛇が嫌いだといっていたが、これも同じようなことを言っているのだと見てよいだろう。 六郷に限らず、各地の漁師が蛇を忌んで「長虫・ながもの」などと忌み名(沖言葉)で船上呼んだという。並んで猿も船霊さんが嫌うといい「えてこう」などと呼ばれた。 なぜ蛇と猿が、などその本来の意義については龍鱗の範囲で展開することではないが、そこには両義的な面がある、という点は押さえておきたい。海蛇状のものを豊漁のしるしと祀ることもある(「シャチ」)。 ツイート