お水もらい

埼玉県戸田市

昔、このあたりに「わらびさま」という立派な殿様がいて、良い政治をし、村の人から尊敬されていた。ところが、戦が始まり、ついには奮戦むなしく負け戦となってしまった。殿様は、退却する先に血に染まる大きな川を見、もはやこれまでと切腹してしまったそうな。

しかし、大川と見えたのは、実は一面の蕎麦畑だった。血と見えたのはその赤い茎だった。これを知った村の人々は、それからは畑に蕎麦を作らなくなったという。

また、このとき殿様の戦死を知らされた奥方様は、侍女と二人で榛名の池へ身を投げて死んでしまったという。このとき、それまで暮らした村を懐かしがり、これから先村が日照りで困ったら雨を降らせよう、雹の害からも守ろう、と誓ったという。

こうして奥方様は龍神に、次女は蟹になって、いつまでも村人を守っているのだそうな。美女木でも、日照りの際には榛名のお山へ行き、池の水を頂いてきた。この水を田にまくと、必ず雨が降ったという。

戸田市webサイト「戸田の昔話・伝説」より要約