昔、岡村の名主の家の庭に、雷雨の雹にまじって、音をたてて硬い角のようなものが降った。そして、またしばらくしての夕立ちには、今度は竜の頭のようなものがドッスンと音をたてて降ってきた。
角は径四センチ、長さ十五センチほどのもので二本、竜の頭のような骨は、二十センチほどあった。名主は小鹿の骨かとも思ったが、天より庭先に降ってくるとは運の向く証拠だろうと、それを桐の箱に入れて大事にしまっておいた。
やがて明治となり、東京で勧業博覧会が開かれた際、名主はあの変なものを出品してみようと、明本寺第二十一世、大能和尚に見てもらい、竜頭尊を信ずれば福を護り、難病は平癒、などの折り紙をつけてもらって出品した。見物客は半信半疑ながら、大変な人気を博したという。