弁天様とお里

茨城県笠間市

昔、岩間に子のない夫婦がおり、近くの弁天さまにお参りして子授けを願った。すると、願いかなって元気な女の子が生まれ、両親はお里と名付けて大事に育てた。お里は美しく優しい娘に育ち、機織りもうまく、十五、六歳になると村でも評判になった。

ある夏祭りでお里は隣村の青年太兵衛と出会い、愛し合うようになった。しかし、二人とも一人っ子で嫁に行くわけにも婿に来るわけにもいかず、娘の幸せな婿取りを願う両親に、お里も言いだすことができなかった。

お里は一人胸を痛めて弁天さまにすがっていたが、次第に痩せ細り病となり、ついにある夜、ひそかに家を出てどこへともなく消えていったという。満開の桜の下には、お里の着物とはきものが、きちんと揃えてあったそうな。

岩間町史編さん資料収集委員会
『いわまの伝え話』より要約