逢いこ滝・一

茨城県高萩市

今っからなんぼぐらい前がな。百年ぐれも前がな。
大水が出るというと、大きな、そのう、まあ大蛇だろうね。昔は蛇(じゃ)ども言ったんだっぺが。
それが、大水を利用して出でくる。すっと、こんだあ、海がらそれを利用して上ってくるやづと、二ついだらしいんだね。
こごくる途中に逢いこ滝っていうのがあんだよ。なぜそごが、逢いこ滝っていうかというと、その、海がら来る蛇と山がら行ぐ蛇がでっかせで、まあ一年に一回だが、三年に一回だが逢うわげなんだ。
そんで、そのう、大水を降らしたんだが、降ったときを利用しんだがで、そこで、でっかせだんで、逢いこ滝と昔の人は言ったんだ。
話者 長谷川幸吉 横川

高萩市教育委員会『高萩の昔話と伝説』より

大北川という川の話になる。川(山)のほうのヌシは上流の扉淵という淵におるといい、その下流に横川滝、さらに下に逢いこ滝があるという。横川渓谷に横川滝は見えるが、逢いこ滝は不明。横川の滝は三つの滝になっているが、あるいはその一番下の滝淵のことか。

ともあれ、この川には、このような山川のヌシと、その河口の磯原(北茨城市)から上ってくるヌシが逢うのだ、という伝説がある。引いた話では双方蛇だと語られているが、色々にバリエーションのある話で、雌雄も話によって逆になる。