むかし、むかし、一人の男がおったど。その男は毎日、毎日、寝てばかしいてちっとも稼ごうとしなかったど。ある日いつものように男が寝てと、一匹の蛇がやって来て、男のぜえの周りをぐるぐる回っておったんだと。近所の人が心ぺえして男のぜえさ入ってみっと、誰も居なくてずない石が庭さころがってたど。
蛇に回らっち男は石になっちまったんだとさ。(川俣 阿曽政秀)
ぜえ、というのは家のこと。蛇が家の周りをぐるぐる回っていた、ということだ。しかし、なぜ怠け者の男が蛇に回られるのか、というとよくわからない。怠惰の戒めの話のようではあるが、「怠けていると蛇がくるぞ」というような俗信が有効なのだろうか。
一応、野州にも、怠け者で好きなぐみを探す山遊びばかりしていた男が蛇に呑まれそうになる、というような話は見える(「ぐみ好きな富造どん」)。ただ、そういった話が多いのかというと、あとは思い浮かばない。