白蛇大神のこと

福島県伊達市

昔、女神山麓に長兵エという豪農がいた。ある夏の世、長兵エが寝ていると、丑三つどきに素足になにかヒヤリと触るものがある。足がひどく重くもあるので飛び起き、家の子郎党を呼んで灯りをともすと、皆はアッと腰を抜かさんばかりに驚いた。

長兵エの足には、真っ白い太い蛇がからみ、鎌首をもたげていたのだ。長兵エは振りほどこうともがいたが、蛇はますます強く巻くばかり。ついに長兵エは、鎌でもってこの白蛇を切り上げ、蛇はバラバラになり落ちた。

そして、眠れぬままに朝を迎えた長兵エは、切り捨てた蛇を見るために庭に出て、さらに驚き大声を上げた。さほどの大蛇とは見えなかった白蛇はの死骸は、タンガラで七ツ半はあろうかという小山をなしていたのだ。

長兵エはこれを手厚く葬り蛇塚としたが、それでも怨霊の祟りなどあったので、蛇類明神として稲荷と併せ祀った。しかしそれでも明神の満足がいかなかったと見え、白蛇大神と改めたところ、災難はたちどころに消滅し、家に元の繁栄が戻ったという。今も、家の氏神として白蛇大神は祀られているそうな。

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月舘町教育委員会『月舘町伝承民話集』より要約

月舘の女神山は機織りを伝えた小手姫伝説の山として知られる山。小手姫そのものを蛇とはいわないが、周辺蛇の伝説はまま見え、これもそのひとつかと思われる。ただし、なぜ土地の豪農長兵エが白蛇に絡まれたのかはわからない。