昔、女神山麓に長兵エという豪農がいた。ある夏の世、長兵エが寝ていると、丑三つどきに素足になにかヒヤリと触るものがある。足がひどく重くもあるので飛び起き、家の子郎党を呼んで灯りをともすと、皆はアッと腰を抜かさんばかりに驚いた。
長兵エの足には、真っ白い太い蛇がからみ、鎌首をもたげていたのだ。長兵エは振りほどこうともがいたが、蛇はますます強く巻くばかり。ついに長兵エは、鎌でもってこの白蛇を切り上げ、蛇はバラバラになり落ちた。
そして、眠れぬままに朝を迎えた長兵エは、切り捨てた蛇を見るために庭に出て、さらに驚き大声を上げた。さほどの大蛇とは見えなかった白蛇はの死骸は、タンガラで七ツ半はあろうかという小山をなしていたのだ。
長兵エはこれを手厚く葬り蛇塚としたが、それでも怨霊の祟りなどあったので、蛇類明神として稲荷と併せ祀った。しかしそれでも明神の満足がいかなかったと見え、白蛇大神と改めたところ、災難はたちどころに消滅し、家に元の繁栄が戻ったという。今も、家の氏神として白蛇大神は祀られているそうな。