昔、けちな男がおり、嫁は食うばかり遊ぶばかりなのでいらない、といって嫁がなかった。そこに、本当にご飯を食べない娘が来たので嫁にした。そして、ご飯を食べない嫁がよく働くことを自慢していたが、男が仕事に行っている間は家の煙出しから煙が上がるし、男が帰ると米びつが空になっているのだった。
不審に思って、近所の人に煙が立っていることを聞いた男は、仕事に行くふりをして家を覗いてみた。すると、嫁の髪の毛の中に目があって、頭の付近が顔になり、口が大きい大蛇になっていて、炊いたご飯をむすびにして、大口にポンポン投げ入れていたのだった。
男に覗かれていたことを知った嫁は、大蛇となって男が逃げ入った風呂桶を七回りに巻き、担ぎ出して堤に投げ入れようとした。しかし、そこに大蛇の嫌いな菖蒲があったので、大蛇が驚いて逃げてしまった。
それから後、大蛇はくもになって家に来て、やはり男を殺そうとしたが、男がくもの糸を切り、くもを殺したので、男は安心して暮らせるようになった。五月五日に菖蒲を軒に飾るのは、大蛇が嫌うので大蛇除けにするのだという。