蛇婿入り

青森県下北郡東通村

昔、婆と娘が暮らしており、娘は毎晩針仕事をしていた。また鍋を掛けて豆を入れて炒りもしていたのだが、そこへ窓から縄を伝って下りて来るものがあった。婆はこれはただものではない、と思い、麻糸をつけた針を下りてくるところに逆さに刺し、下りて来るものに刺さるようにしておいた。

化け物が去った後、婆がその糸をたどると、山を越えた沢に行き、そこで話す声が聞こえた。声は、人は賢く針を刺されたが、娘には子を宿してきた、と言っていた。すると、中にいた蛇が、そんなことしても、娘になめくじを飲ませたらみんな下りてしまう、と言っていた。

婆は、良いことを聞いたと帰り、さっそく娘に陰干しにしたなめくじを飲ませたところ、蛇がジョロジョロ下りてきたという。蛇となめくじは敵なのだ。「わが行ぐ先にいる長虫は、たまじり姫にことわりが如し、あぶらんけそわか、あぶらんけそわか」と三回唱えて山に入ると蛇が出ない、と言った。

『日本昔話通観2』より要約

立ち聞き型の蛇婿入りの話だが、蛇の子を堕ろすのにナメクジというのは珍しい。確かに三竦みで蛇はナメクジに弱いが、この場面で出てくるのはあまり聞かない。しかし、そこをさて置けば取り立てたところのある話でもないだろう。

問題なのは、最後に加えられている蛇除けの呪文のほうだ。「たまじり姫」とは他に聞かないが、何のことか不明。全国の同系の呪文では、同箇所には多くヤマタツヒメが入り、猪のこととされる(これも蛇の天敵の意)。

話の流れからすると、「たまじり姫」とはナメクジのことなのだと思うが、ナメクジをタマジリというのかどうかは知らない。カタツムリのことだろうか。