娘の涙

青森県上北郡東北町

長者の美人のおかみは、吝嗇であり、使用人に休みも与えず働かせたので、火事になっても誰も火消しを手伝わず全焼し、おかみは沼に身投げした。そして頭に二本の角が生え、口は耳まで裂け、蛇のような鱗が生えた沼の主になり、村の娘を捧げないと村を水浸しにする、というようになった。

何年目かに庄屋のひとり娘が捧げられる番となり、召使が代わりの娘を探しに旅に出た。やがて山奥で貧しい母娘に会い、わけを話すと、母は断るも娘が母の面倒を見てくれるなら、と身代わりになった。

娘は沼のほとりに行くと、主に引かれながら、母の長生きを願い、涙を沼の主の手にこぼした。すると、沼の主の鱗が溶けて、もとのおかとなり、おかみは娘の優しい涙のおかげで元の姿に戻れた、と礼を言い、宝の玉をくれた。娘がその玉を持って帰り、悲しみのあまりつぶれてしまった母の目をなでると、母の目は開き、それから母娘は幸せに暮らしたという。

『日本昔話通観2』より要約

陸中胆沢の掃部長者伝説とほぼ同じ筋の話だが、おかみが化した悪大蛇が宝の玉を残し、その玉で母の目が治っている。これは竹生島の縁起を語る「さよひめのそうし」などに見るモチーフであり、これが同地でも語られていた資料となるだろう。