戸窓ふたぎ 青森県十和田市 五月四日、夕方、菖蒲・蓬を戸の口・窓の上・尾根に三本づつさして邪除けとす。之を戸窓ふたぎといふ。昔、八ノ太郎といふ魔神、十和田湖より追はれて各地をさまよひ歩けども、皆軒に菖蒲・よもぎをさせば、ついに秋田に行きけるが、秋田にてこれをささぬ家を見出し、八郎潟をつくりて主となれり、これ五月四日の晩なりしといふ伝え咄あり。(『十和田村史』) みずうみ書房『日本伝説大系1』より 十和田湖で南祖坊との戦いに敗れた八郎が、どこかで休もうと移動するが、その先々の家はこうして戸窓をふさいでいたので入ることができず、八郎潟まで行ってしまうことになる。「八郎が来るからふさぐ」と、この行事の由来としているものと、「この行事の時季だったので八郎は入れなかった」と八郎以前からこの行事があったと語るものがある。 ともかく、何故か八郎潟と反対の十和田湖から八戸の方にかけて、五月の節句の蛇除けのまじないを八郎伝説に重ねて語る。五月の節句は菖蒲湯・菖蒲酒で娘が蛇の厄を落とすというのがもともとの意味合いだったのだが、全国各地でこのように戸口・屋根に菖蒲・蓬をさして蛇除けのまじないとしもする(「軒菖蒲の由来」など)。 そのような広く見える習俗が十和田湖周辺では八郎伝説で説明されている、ということなのだ。また、下北のほうには、釘を戸や塀に打って竜蛇を避ける琵琶法師と竜の話型の事例がある(「池の主の知らせ」)。 ツイート