黒竜と白竜

門部:日本の竜蛇:中部:2012.01.03

場所:福井県敦賀市 疋田
収録されているシリーズ:
『日本の伝説7 北陸』(山田書院):「黒竜と白竜」
タグ:蛇聟入り/北陸の黒竜


伝説の場所
ロード:Googleマップ

敦賀から笙の川を遡った山間の疋田に不思議な竜蛇譚がある。不思議、というより訳の分からぬ話だ。時々全国を網羅した伝説シリーズなどでは意味不明の話になっており、地元の方を探すとスッキリする、という例がある。今回はそういったところを見ておこう。

白龍の祠
白龍の祠
リファレンス:何も無い街 敦賀画像使用

黒竜と白竜:要約
昔、疋田の庄屋の家に、笹飴作りの上手な一人娘がいた。ある時、娘は行き倒れの若い旅人を見つけ介抱する。元気になった若者は恩返しにと庄屋の家の下男として住み込んで働くようになり、娘とは相思相愛の仲となっていった。
娘も婿取りの話の出る年頃となった。しかし、ここで例の若者と娘の仲が庄屋の耳に入る。どこの馬の骨とも分からん者に庄屋を継がせるわけには行かぬと、若者に難題を出し、それができたら娘をやろう、ということになった。
しかし、若者は期限の十日を過ぎ、半月が過ぎても戻らなかった。待ち侘びた娘はある日、髪の滝で身を浄め、傍の大岩の上で若者の無事を祈った。すると、にわかに大風雨となり、黒雲が娘を若者の消えた駄口の方へと連れ去ってしまった。
その駄口の方で、ある男が松の影でたたずむ一人の娘を見つけた。娘は着物を松にかけ、裸になると、川端に立ち何か叫んだ。すると、川の中から片目の黒竜が現われ、娘も白竜の姿となった。そして、二匹の竜は川の中へ消えて行った。

山田書院『日本の伝説7 北陸』(日本伝説拾遺会)より要約

難題聟譚なんだか蛇聟譚なんだかどの側面も中途半端で主筋の分からない話となっている。しかし、どうも敦賀の地域資料『阿原池─笙の川周辺に生きた人たちの話』(森田 和夫/共著)によると、これは蛇聟譚であるらしい。以下のwebサイト様に要約がある。

「黒龍と白龍」(webサイト「何も無い街 敦賀」様へ)
サイトトップはこちら

若者がはじめから黒竜の化身であった、ということで良いのだろう。これならば、竜蛇が娘を見初める→娘の父が難題を出して謀る→娘が竜蛇となって夫の竜蛇と去る、という流れの話として了解できる。

また、先のサイト様の様子を見ると、どうもかの蛇聟譚の典型話として知られる「夜叉ケ池」伝説からの派生話であるようにも思え、周辺大変に竜蛇伝説が濃いようだ。地域資料レベルの竜蛇譚を網羅する段階になったらまた振り返ってみるべき一話であるかもしれない。

娘が祈ったという大岩大権現
娘が祈ったという大岩大権現
リファレンス:零細企業経営者画像使用

memo

二人(二匹)が姿を消したという駄口には「乙女ガ淵」という伝承を伝える淵があるようだ。『日本の伝説7』には写真もある。また、駄口では国道の拡幅工事の際、片目の蛇が出て来たので「黒龍之碑」を立てたと言う。めくらの大蛇が出て来て工事の邪魔をしたのだともいうが……昭和の話である。

黒竜と白竜 2012.01.03

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