岐阜県の竜蛇

門部:日本の竜蛇:「怪異・妖怪伝承データベース」より

話 名
資 料 民族 1巻1号
場 所 不破郡 岩手村
要 約 日本武尊が伊吹山の大蛇を退治するために赴いた際、休息の時に突刺した杖が成長し、神杉になった。これが、不破郡岩手村杖立神社の逆さ杉の由来である。

話 名
資 料 民族 3巻1号
場 所 岐阜県
要 約 諏訪神社を遷して城を築こうとしたときに、霊蛇が出現した。道にいて動かなかったので、梅の枝で打つと、目を傷つけて去った。それ以来氏子は梅の木を栽えない。

話 名 大蛇
資 料 民俗学 4巻10号
場 所 吉城郡 坂上村
要 約 昔、ある青年が嫁ケ淵で会った娘と結婚した。嫁は懐妊したが、夫に出産を見ないように頼んだ。しかし夫はひそかに見ると、大蛇が子に乳を与えていた。大蛇は嫁ケ淵の主だった。

話 名
資 料 郷土研究 7巻1号
場 所 益田郡 高根村
要 約 小三郎という杣人が大きな岩魚を食べたら、しきりに水を飲むようになった。3日後には腰から下が蛇体になり、さらに3日後には杣小屋のあたりは池になり、小三郎は蛇になっていた。

話 名 山の主,山の魔
資 料 ひだびと 3年7号
場 所 岐阜県
要 約 美しい娘をみそめた山の主が小さな蛇や大蛇になって言い寄ったが、笹を煮た物があった為に近づけなかった。

話 名 大蛇,腕
資 料 ひだびと 3年8号
場 所 高山市
要 約 子供の泣くような甲高い鼾をかく胴回り2寸樽程の大蛇と木地師の兄弟が戦った。一度は大蛇が退散するが、夜とてつもない大きさの毛だらけの腕となって現れ、兄のほうは腹を割かれて死んでしまった。

話 名
資 料 ひだびと 3年8号
場 所 吉城郡
要 約 大丹生池には主が住んでおり、大蛇の様な物を実際に見た人もいる。主の一族が分住する時には高原川が洪水になると噂され人々は恐れた。また、ある時円空上人に仏像を沈めてもらい主を鎮めた。

話 名 蛇,大蛇
資 料 ひだびと 3年12号
場 所 吉城郡 神岡町
要 約 釜洞に住む毒蛇が渓谷を氾濫させて日本海に出ようとするのを里人の夢枕に観音が現れて告げ、力を貸して毒蛇を退治する。

話 名 蛇,主
資 料 ひだびと 4年2号
場 所 吉城郡 神岡町
要 約 ある夜半に異様な物音がして石の混じった大雨が降ったので易者にみてもらったところ、池で鉄器を洗われた為に鉄器を嫌う主の大蛇が逃げたためだと言われた。そして十三塚を造ればよいだろうと言ったのでそれを造った。

話 名 がをろ
資 料 ひだびと 4年6号
場 所 大野郡 丹生川村
要 約 河童が馬を川に引き込もうとしたが馬の力が強く馬小屋へ引きずり込まれた。親父に見つかり折檻を受け、許して欲しいと言い針と蛇の鱗を金襴の袋に入れてくれた。それでバヒフの人の喉を撫でると治った。

話 名
資 料 ひだびと 4年9号
場 所 飛騨地方
要 約 娘の元に毎夜美しい男が忍んで来た。乳母は男を怪しみ糸をつけた針を男に付け、翌朝その跡を付けた。すると山奥に至り洞穴の中から娘を孕ましたが、菖蒲湯に浸かれば難を逃れる、と言う会話が聞こえてきた。その通りにすると娘は蛇の子を産み落とした。

話 名 猪野谷のへんべ,蛇
資 料 ひだびと 4年9号
場 所 大野郡 宮村
要 約 毎年来る燕に土産を持って来るよう家人が声を掛けた。すると燕は白い種を持ってきた。畑に播くと南瓜ができたが、中から蛇が出てきた。割る時に片目を潰した蛇は姿を消した。今でも蛇が現れる事がある。また大きい南瓜はその地では喜ばれない。

話 名
資 料 ひだびと 4年9号
場 所 大野郡 丹生川村
要 約 ある庄屋の娘の元に若い男が通って来た。素性を明かさないので針に糸を付け男の着物に刺し、朝になってから糸を辿った。すると川の側で大蛇が苦しんでおり、死んだら家を守ると言った。以来家の当主の腋には鱗が3枚生えるという。

話 名 白蛇
資 料 ひだびと 4年9号
場 所 大野郡 丹生川村
要 約 金持ちの家に白蛇がいたが下男下女が殺した。すると下男下女は急病で死に、家も零落した。

話 名 蛇,嫁
資 料 ひだびと 4年10号
場 所 大野郡 丹生川村
要 約 山であった女を嫁にした。嫁は飯を食べなかった。子が生まれる時にその姿を見ないで欲しいと頼まれた。覗き見ると大蛇であった。嫁は目を子の為に残して池に帰った。目を盗まれたので池に行くと残っていた目をくれた。盲目になった嫁の為に寺へ鐘を寄進した。

話 名
資 料 ひだびと 4年10号
場 所 大野郡 丹生川村
要 約 山小屋で炭焼をしていた老人の元に毎日変な男が来た。男は煙草の吸殻が怖いと言ったので老人は男の正体が蛇だと気付き、金が怖いと答えておいた。毎日来て煩いのである日煙草の吸殻をかけたところ男は怒って夜、金を老人の上にたくさん投げていった。

話 名 大蛇
資 料 民族学研究 2巻4号
場 所 高根村
要 約 テンマという下女がいた。美しい娘で、テンマの煮る食べ物は味がよく主人に気に入られていたが、何かの事情で長者の家に居られなくなり付近の家に身を隠した。後にテンマの炊事していたところに蛙や蛇の骨が沢山見つかりそれで料理を煮出していたことがわかった。テンマと親しかった青年が池に行きもう一度人間となって会いたいと叫んだが、テンマは頭に六本の角のある大蛇となって現れた。青年は恐れしくなって逃げ帰り、それから池をテンマが池というようになった。

話 名
資 料 ひだびと 5年7号
場 所 大野郡 清見村
要 約 栗の木の下で昼寝した娘が夜、急に蕨取りに行った。帰ってくると気違いの様になっていた。祖母が娘は大蛇に見初められたのだと考え、鉄漿をといたものを飲ませたら静かになった。

話 名 野槌
資 料 民間伝承 3巻12号通巻35号
場 所 岐阜県
要 約 野槌は丈の短い蛇で、槌のような形をしている。道を転がってきて通行人を襲うといわれている。

話 名 龍人
資 料 民族学研究 5巻4号
場 所 吉城郡
要 約 天城氏方は豪家で宿屋業をしていたが、ある時遍路が来て嫁となった。不思議と必要な魚を捕らえてきた。後に出産することとなったが、嫁は1室に篭り決して見てはいけないといったが、夫が覗くと大蛇が赤子に乳を飲ませていた。嫁は恥じて嫁が淵に逃げ込んでいった。そのさまを黍畑から見て「キビワルク」あったので以来黍を作らないという。ある年黍を作った家では3年間不幸が続いたという。天城氏方の岩には嫁の手形、魚の跡、下駄の跡がある。また尽きない布、尽きない米俵があったが、後に尽きた。これらは龍神の為した事という。

話 名 大蛇
資 料 民族学研究 6巻4号
場 所 岐阜県
要 約 池のサコと称する湿地がある。昔は池だったが、ある年に大雨があり、池の水が増加して堤防が壊れたので大蛇はどこかに行き、池の形状を失い湿地となったので池のサコという。大蛇の住んでいた間は、久郷某方は繁盛したという。

話 名 ヌシ,大蛇
資 料 民間伝承 14巻1号通巻141号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 上宝村双六に黒淵という深淵がある。そこの主は大蛇で、ある時隣村の寺で受戒があり、大蛇は美女に化けて説法を聞きに行った。ところが和尚に大蛇であると見破られた美女はおとなしく説法を聞き、そして黒淵には帰らずに何処かへ姿を消したという。

話 名
資 料 民俗採訪 昭和32年度号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 昔、尻高の草分けの家に、毎晩きれいな女がきて機織りの筬を借りに来た。朝早く帰しに来て、お礼に魚を軒先の木の鉤にかけて行った。夜、龍神渕から機織りの音がしていたという。木の鉤が腐ったので金の鉤に取り替えたら、女はこなくなった。金気を嫌ったから、女の正体は蛇だろう。

話 名 大蛇
資 料 民俗採訪 昭和32年度号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 黒渕の主は大蛇。黒渕へは雨乞いに行く。

話 名
資 料 女性と経験 3巻4号
場 所 吉城郡 坂上村
要 約 正月16日に16歳の娘を池の蛇の人身御供に出す慣わしがあった。出した家には客があることに人数分の魚を蛇が置いていった。代々の当主はみな鱗が生えている。

話 名 横槌
資 料 あしなか 通巻96号
場 所 岐阜県
要 約 奥美濃の人によると、横槌の名で槌の子蛇がカオレ谷源流の屏風・日永山付近に住むとか。

話 名 (俗信)
資 料 古利根の村と山の村と 通巻4号通巻4号
場 所 飛騨市 神岡町
要 約 夢に関する俗信。歯が抜ける夢をみると近親に悪いことが起こる。牛が追われる夢を見たら、その日のうちに神社にお参りしなければならない。蛇の夢はお金が入る、など。

話 名 槌蛇
資 料 あしなか 通巻122号
場 所 金山町
要 約 飛騨川の杉林で槌蛇が山の上から転がり落ちるのを見た人がいる。槌蛇は普通の蛇で交尾期の蛇がからみ合ったものだという。高い所から丸くなって転げ落ちる。大きさも木槌ほどであるという。

話 名 大蛇
資 料 あしなか 通巻124号
場 所 金山下呂町
要 約 かつて、金山から上麻生へぬける七宗山の官林で大山火事があった。その時、山中から大蛇が抜け出し、その道筋の草木は波を打ったような痕を残し、前山の方へなびき続いていた。

話 名 ノヅチ
資 料 あしなか 通巻122号
場 所 白川村
要 約 8月28日の午後、ノヅチのような蛇を見つけたが、キジバトを飲み込んだ蛇だった。

話 名
資 料 近畿民俗 通巻49号
場 所 岐阜市
要 約 蛇首塚は長良川で水を飲んでいたところ刎ねられた大蛇の首を祀ったものである。一説には、薪刈りの鎌で誤って大蛇を傷つけたら、夢に大蛇が現れ、長く生きることが出来ないから、祀ってくれることを条件に雨を降らせることを約束したという話がある。

話 名 家の主,蛇
資 料 旧静波村の民俗 昭和45年度号
場 所 恵那市 明智町
要 約 10月頃のこと。ある家の井戸の脇の椿の木の処に、白地に水色の水玉模様の、直径10cmくらいの蛇らしきものが横たわっていた。頭も尻尾もみえなかったが、備中鍬で叩くと動いた。家の主だったらしい。

話 名 ウナギ,蛇
資 料 旧静波村の民俗 昭和45年度号
場 所 恵那市 明智町
要 約 川手の淵は椀貸淵と繋がっていて、主の大ウナギが行き来しているという。ここで子どもが泳ぐと、主にへそを取られるという。主はウナギとも蛇とも言われている。

話 名 大蛇
資 料 旧静波村の民俗 昭和45年度号
場 所 恵那市 明智町
要 約 神様が大蛇を退治して3つに切ったら、頭は大峰山に、胴は串原集落の中山神社に、尻尾は駒山神社になった。

話 名 ロクロ首,蛇
資 料 旧静波村の民俗 昭和45年度号
場 所 恵那市 明智町
要 約 岩村と明智の間の旧街道に、長い髪で赤い舌の女のロクロ首が出たという。蛇が化けたものと言う。この街道の松は、ロクロ首が下がるので枝がすべて下向きになっている。ある時、侍がこのロクロ首に遭った。侍は山と山の間に退いて待ち構え、近づいてきたロクロ首の長い首を切り落として退治した。

話 名 青大将
資 料 西郊民俗 通巻59号
場 所 荻原町
要 約 岐阜県の諏訪神社で、神輿を移す時、青大将が社地にいて動こうとしない。金森家の家臣が怒って梅の枝で蛇の頭を打ち、蛇は左の目を傷つけてその地を去った。

話 名 槌の子蛇
資 料 あしなか 通巻140号
場 所 徳山村
要 約 岐阜県揖斐川の源流徳山村で、3人が30分ほど槌の子蛇を観察したとの情報を受けて、捜査に当ったが捕まらなかった。

話 名 夜叉蛇
資 料 美濃民俗 通巻94号
場 所 揖斐郡 藤橋村
要 約 西杉原の村はずれの徳山街道にそったところにある沼に夜叉蛇が住んでいる。沼に連なる池を埋め立てたるときにたたりを恐れて経塚をつくった。この塚を掘ると鶴見がつぶれるといわれている。

話 名 夜叉蛇
資 料 美濃民俗 通巻94号
場 所 揖斐郡 藤橋村
要 約 夜叉蛇が沼の埋め立て工事中、工事の人にご馳走をしたいので膳と椀を貸してもらう。お礼に何日が「あま」につけている「かぎ」にいっぱいの魚をつけていく。「かぎ」を金属製のものに変えたら魚を吊るしに来なくなってしまった。

話 名 母の怨
資 料 日本随筆大成第一期 18巻
場 所 岐阜県
要 約 実右衛門という無頼がおり、母親に不孝な行為を行っていた。後に母が死んだので火葬したが、片腕だけ焼けずに残ったので、人に見られるのを厭い、持ち帰り、後日に川にでも流そうとした。その夜、実右衛門は腕が蛇になり襲ってくると叫び、狂乱した。その後毎夜続くので、村の人が協議して村中3ヶ寺の僧に阿弥陀経を誦させたところ、その夜から止まった。実右衛門は懺悔し僧になった。

話 名 大蛇
資 料 日本随筆大成第一期 18巻
場 所 岐阜県
要 約 食用に用いている谷水を、はなはだ暑い日にある人が飲んだところ、その水が消えず、起臥に腹中で雷鳴し、色々試したが治らなかった。ある人が、この谷には大蛇が住んでいるというからその毒に当たったのだろうと考え、古釜の類の鉄を濃く煎じて飲ませたところ治った。

話 名 竜女,大蛇
資 料 フォクロア 通巻33・34・35号
場 所 養老郡 上石津町
要 約 寺の先祖、怪力坊の奥方は大蛇で、出産の時正体を見られたため姿を消した。

話 名 蛇穴,竜
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 冠婚葬祭の際、借りたいものを紙に書いて蛇穴の淵に流すと、翌日貸してもらえた。あるとき、鼓を10個借りて1つ返さなかった人がいたら、急に大嵐になり、竜が出てきて隠した鼓をくわえて昇天した。以来、何も貸してくれなくなったという。

話 名 蛇穴
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 冠婚葬祭の際、借りたい膳椀を蛇穴にお願いすると貸してもらえた。あるとき、返さなかった人がいて、以来何も貸してくれなくなったという。

話 名 蛇穴
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 冠婚葬祭の際、借りたい膳椀を蛇穴の神様にお願いしたら貸してもらえた。

話 名 蛇穴
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 冠婚葬祭の際、借りたい膳椀を蛇穴にお願いすると貸してもらえた。あるとき、割ってしまって返さなかった人がいて、以来何も貸してくれなくなったという。

話 名 大蛇
資 料 ひだびと 9巻2号通巻80号
場 所 高山市
要 約 筆者の祖父が所用で松倉山へ登ったところ、たった今大蛇が通ったらしく笹原が2つに割れている光景を見た。祖父は青くなり家に逃げ帰ったが、そのまま寝込んでしまった。

話 名 蛇穴
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 昔、借りたいものを蛇穴の淵にお願いすると貸してもらえた。あるとき、鼓を借りて1つ返さなかった人がいた。その人の家は火事になり、焼けてしまった。

話 名 大蛇
資 料 ひだびと 9巻2号通巻80号
場 所 高山市
要 約 筆者の母が維新前に聞いた話。ある朝、町の者が松倉山へ登った所、1匹の大蛇が死んで横たわっていた。この話は町中に広まり、2・3人の物好きが見物に行った。それからというもの、松倉山には大蛇の死骸見物に行く人が絶えなかったという。

話 名 蛇穴
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 昔、借りたいものを蛇穴の淵にお願いすれば貸してもらえた。あるとき、戸隠神社の祭りで鼓が足りなかったので借りたとき、返さなかったら、急に大嵐になり、竜が出てきて隠した鼓をくわえて昇天した。

話 名 蔵の神,白蛇
資 料 ひだびと 9巻4号通巻82号
場 所 岐阜県
要 約 土蔵の中または付近に白蛇がいて、それが蔵の神、或いは蔵の主と呼ばれている。ある家の若主人が蔵に入ったら、大きな蛇がいて、それを殺そうとしたが失敗した。数日後、蛇が水を飲みに蔵を出たところを見て殺したが、次第にその家の身代が悪くなったという。

話 名 大蛇
資 料 とやま民俗 通巻27号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 天皇が落ち延びてきた先で大蛇に襲われた。天皇の情勢が険しくなったとき大蛇のいた木が爆発し、大蛇が飛び散った。そして天皇は助かった。

話 名 蛇身,チンマ
資 料 ひだびと 11巻2号通巻104号
場 所 高山市 高根町
要 約 日和田の豪家原家にチンマという下婢がいた。よく働き料理の腕がすばらしく、そのうえ美人であった。チンマは杣人の小三郎と恋仲になり、村人に羨ましがられたが、あるとき突然姿が見えなくなった。「チンマが洗い物をしていた流しの下に蛇の骨が積まれていた」「蛇のだしをご馳走に入れていた」などのうわさが流れ、チンマは蛇身であることが見破られて姿を隠したのだということになり、着物に糸を通した針を刺しておくと糸が池の原の雌の池に消えたので、その池の主であるといわれた。

話 名 池の主,蛇
資 料 美濃民俗 通巻212号
場 所 揖斐郡 藤橋村
要 約 池の主が若侍に変身して、村の娘を妊娠させる。娘の母が若侍の裾に縫いこんだ糸をたどっていき、池での母蛇との会話から、腹の子を流すために5月の節句に菖蒲酒を飲ませればいいことを知り、そのとおりにしたら、娘は元の身体になった。

話 名 岩魚,小三郎,蛇身
資 料 ひだびと 11巻2号通巻104号
場 所 高山市 高根町
要 約 恋仲であったチンマが蛇身とうわさされ姿を消した後、小三郎は次第に血色が悪くなった。あるとき弁当のメンパ(弁当箱)を溝川にいれておいたところ、2匹の岩魚がかかった。それを食べた小三郎はのどがかわき、小川の水を大量に飲んで、一緒にいた同僚に早く里へ帰れと告げる。溝川はたちまち池になり、小三郎はそのなかに消えた。小三郎の母は嘆き悲しんで池の岸で小三郎を呼び続けると、蛇身になった小三郎が現れた。「元の姿を見せてくれ」と頼むと蛇身は池に沈み、半身だけ蛇の姿で再び現れた。

話 名 さるとらへび
資 料 常民 24号
場 所 武儀郡 洞戸村
要 約 1200年前にさるとらへびという妖魔が暴れた。藤原高光公が神社を建てて祈願し、退治したが、940年前にまた暴れたので、また高光公が退治した。頭は猿で同体は虎、尻尾が蛇。猿のように知恵があって虎のように凶暴で蛇のように執念深い。

話 名
資 料 民俗採訪 通巻昭和46年度号
場 所 揖斐郡 揖斐川町
要 約 安八郡に安八太夫という豪農がいた。ある日照りの年、蛇に向かって雨を降らせてくれたら娘をやると言ってしまい、雨が降ったので蛇に末の娘をやることになってしまった。娘は夜叉が池の主である蛇に嫁いだ。後に里帰りして昼寝をしていた娘が「戸を開けて入ってくるな」と言っていたにもかかわらず母親が入ってしまい、娘を見ると大蛇になっていた。以来、娘は大木の枝を風なしで揺することで来訪したことだけを告げるようになったという。

話 名 さるとらへび
資 料 常民 24号
場 所 武儀郡 洞戸村
要 約 1200年ほど前にさるとらへびという妖魔が暴れた。1丈8尺(5.4メートル)、頭は猿、胴は虎、尾が蛇で、京都まで飛んで行ったので、天皇が藤原高光公に退治を命じた。高光は峯稚児神社の岩屋でお告げを受けて、さるとらへびを矢で撃って退治した。

話 名
資 料 民俗採訪 通巻昭和46年度号
場 所 揖斐郡 揖斐川町
要 約 雨乞いの代償に蛇に嫁いだ娘の話が、下長瀬と高科にもある。雨がほしいときは、池に三方に乗せた白粉とお経を浮かべる。そうすると真ん中まで行って、三方だけが浮かんでくるという。父親が姿を見せてくれと頼むと、真っ黒な雲の間から蛇の姿を見せたという話もある。

話 名 さるとらへび
資 料 常民 24号
場 所 武儀郡 洞戸村
要 約 高賀山のさるとらへびという化物が暴れた。頭は猿、胴は虎、尾が蛇。禁廷様の子供をさらって殺した。その子を祀ったのが峯稚児神社。京都から藤原高光が来て退治した。高賀山の瓢ヶ岳の池の一つだけ動かない瓢箪がさるとらへびの真の姿で、それを矢で撃って退治した。さるとらへびの屍骸を焼いたところは草が生えない。さるとらへびの喉仏と言う物が宮にあり、外に出すと雨が降った。

話 名 刀,般若の札
資 料 民俗採訪 通巻昭和46年度号
場 所 揖斐郡 揖斐川町
要 約 横蔵寺の大般若のお札は霊験あらたかなので戸口に祀る。昔、ボロボロの鍔を付けた刀を持った侍がいた。この侍が寝ているところを蛇が向かってきた。もう1人の侍がそれを見ていたところ、刀がシューッと音を立てて抜け、蛇を近寄らせなかった。目撃した侍は寝ていた侍を起こし、刀を取り替えてもらった。刀屋に見せたところ、刀はボロボロの古いものだったが、般若のお札が貼ってあった。そのおかげで蛇に飲まれずにすんだのだという。

話 名 さるとらへび
資 料 常民 24号
場 所 武儀郡 洞戸村
要 約 高賀山の、頭は猿、胴は虎、尻尾が蛇の化物の目の光で琵琶湖の魚が取れなくなったので、天子の命令で京都から藤原高光が来て、矢作神社で作った強い矢で撃って退治した。

話 名 (俗信)
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 年中行事に関する俗信。5月の節供には団子を笹でまいて笹巻きを作るが、これをゆでた水を家の回りにまいておくと、長虫が出ないという。酒の中に菖蒲をつけた菖蒲酒を女性が飲むと、孕んだ子が蛇の子ならこれを飲むと下りるという、など。

話 名 大蛇
資 料 美濃民俗 通巻260号
場 所 大垣市
要 約 夏の昼下がり、旅の坊さんが草むらで大蛇に襲われた。大蛇はどこまでも追ってきて、金生山の頂上付近の岩穴に入ってお経を唱えていると、岩を締め付けてきた。もうだめだと思った坊さんが権現に祀ることを約束すると岩を締め付けるのをやめた。

話 名
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 ある男性が娶った女性は、実は蛇だった。それが判ったので離縁することにしたが、女は大きな桶をくれと言った。女は男に桶をのぞけと言い、のぞくと桶の中に入れられた。男は桶に入れられたまま山へ連れて行かれたが、木の枝につかまって逃げた。女は男をさがしたが、よもぎと菖蒲のにおいで判らなくなった。だから5月5日の節供の時には蛇除けとしてよもぎと菖蒲を屋根の回りにさしておくのだという。

話 名
資 料 中京民俗 通巻30号
場 所 恵那郡 蛭川村
要 約 昔、男が蛇石に座って煙草をふかしていると、蛇が出てきて男をじっと見つめる。男はキセルのヤニを蛇に食らわせる。後に男は突然死に、人々は蛇をからかった祟りだとして、石に近づかなくなった。

話 名 トカゲ,大蛇
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 ワラビの三股のところにトカゲがいた。その三股を折ったところ、大蛇になって追いかけてきたことがあった。だから、三股は折るものではないという。

話 名 夜叉ヶ池,大蛇,雨乞い
資 料 民俗文化 通巻462号
場 所 滋賀県,岐阜県,福井県
要 約 美濃では安八太夫の娘が、雨乞いのため池の主の大蛇とともに夜叉ケ池に入水したという伝説が伝わっている。

話 名
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 ある男のところに嫁に来た女が、蛇が化けていたことが判ったので、出て行ってくれと言うと桶を餞別にくれと言われた。背負わせると中をのぞいてみろと言うのでのぞくと、男を桶につっこんで山へ入っていった。男は木の枝が下がっているところで飛び降りた。そこにはよもぎと菖蒲がたくさんあったので、臭いが強すぎて女は男を見つけられなかった。それで5月節供には菖蒲とよもぎで屋根を葺く。

話 名 夜叉ヶ池,大蛇,雨乞い
資 料 民俗文化 通巻462号
場 所 滋賀県,岐阜県,福井県
要 約 江州音頭の内容。昔美濃国安八郡に安八太夫という人が娘を二人もっていた。ある年の夏の干ばつで困っていると、一人の山伏が娘を一人くれたら雨を降らすと言った。娘のお里はそれを承諾し、安八太夫が山伏にそう告げると、山伏は早速大声でお経を唱えた。すると忽ち大雨が降り出した。山伏は実は古池に住む大蛇で、女房をくれた恩返しに水の不自由はさせないと言って姿を消した。

話 名 蛇の子
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 ある娘のところに美男が通っていたが、戸を開ける気配がなかった。不思議に思った親の言う通りに、娘は男の着物に針をさしておいたら、糸が節穴を通って池まで続いていた。娘は蛇の子を孕み、菖蒲酒を飲ませるとたらいに7たらいも堕りた。以来、娘が蛇の子を孕まないように三月節供によもぎ餅、五月節供に菖蒲酒、九月節供に菊酒をあげるという。

話 名 夜叉ヶ池,大蛇,雨乞い
資 料 民俗文化 通巻462号
場 所 滋賀県,岐阜県,福井県
要 約 いまでも美濃の人々は、夜叉ケ池で雨乞い祭りをする際、大蛇の妻となったお里の喜びそうな白粉、縫い針を笹の葉舟に乗せて池の水に浮かべて扇であおぎ、沈めば望みの雨が降り、吹き返せば願いが叶わないという。

話 名 (祠の罰)
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 笠ヶ岳に長者がいた。その長者は祭り好きで、ある年の旧8月に自宅の祠で村人を呼んで祭をした。夏だというのにそば粉をまいて「雪だ」と言ったり、祠の周囲に「つららだ」と言って蛇をつり下げたりした。罰が当たって、長者は数年のうちに亡くなったという。

話 名 夜叉ヶ池,大蛇,火の玉
資 料 民俗文化 通巻462号
場 所 滋賀県,岐阜県,福井県
要 約 越前側の夜叉ケ池伝説。住職のもとに山伏が来て、自分は夜叉ケ池に住む大蛇であるが、先妻に先立たれ後妻を娶ったが先妻の亡霊が現れ後妻と争うので霊を鎮めてほしいと懇願した。そこで夜半に池の畔に行くと、赤青2つの火の玉が追いつ追われつしている。先妻だという青い火の玉に住職が印を結んで切りつけたところ火の玉は消えた。山伏は永久に寺を守ることを言い残し池に戻っていった。

話 名 大蛇
資 料 民俗採訪 通巻昭和54年度号
場 所 高山市
要 約 太郎助の碑がある山の裏に2つの沼があり、雄雌2匹の大蛇が住んでいた。ここでは狭いので海に行きたいと言って大雨を降らせ、大洪水を起こして海へ行ったという。

話 名 夜叉ヶ池,大蛇
資 料 民俗文化 通巻462号
場 所 滋賀県,岐阜県,福井県
要 約 越前の北の方に伝わる話。美濃国安八太夫の娘お里が身につけていた針の鉄分のため大蛇は病気になったのでお里は実家へ返される。これを聞いた越前の長者は越前側に水を流してもらいたいため娘を後妻として夜叉ケ池に嫁入りさせた。これを知ったお里は怒って夜叉ケ池で大喧嘩が起こったが、長者は男を雇ってお里を弓で射殺してしまった。

話 名 膳椀貸しの淵
資 料 郷土研究 3巻12号
場 所 加茂郡
要 約 亀淵という所があり、龍宮に通じていると言われている。龍宮神社に行って膳椀を貸してくれるように頼み、翌朝行くと水上に浮いている。返すときも水上に浮かべる。しかし、借りたうちに一個を返さない者がおり、それから貸してくれなくなった。今日ではこの竜王に願掛けをすれば下の病気が治ると信じられている。

話 名 乙姫様
資 料 民族学研究 8巻3号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 龍神淵という所がある。美しい娘が度々有馬氏のところへ機織機を借りに来て、返すときには必ず沢山の魚を礼に持ってきた。娘には帰る姿は見るなといわれていたがある時障子の穴から見ると橋の上からふわふわと淵のなかへ飛び込んだ。以来美女は来なくなった。竜宮の乙姫様だったという。

話 名 竜骨
資 料 近畿民俗 通巻49号
場 所 揖斐郡 春日村
要 約 六所神社の竜骨を、ある旱年に持ち出したら、言い伝え通り大雨になり、ついに洪水になったので、以後封印してしまいこんであるという。

話 名 龍神
資 料 民俗採訪 昭和32年度号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 双六の龍神ヶ渕の穴の奥には竜宮があるという。昔、子供が穴で遊んでいて、龍神に引き込まれて死んだことがある。この穴は岩井戸のチカツエ岩に通じているという。

話 名 竜宮
資 料 近畿民俗 通巻58号
場 所 山県郡 伊自良村
要 約 長滝山の頂上にある3つの小さな池は竜宮に通じていると伝えられている。旱魃の時は、萱を刈って池に投げ入れると、たちまち雨が降るという。

話 名 乙姫様
資 料 民俗採訪 昭和32年度号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 昔、苧生茂の家に洗い渕の乙姫様が機織りの道具を借りに来たが、貸さなかった。渕に入る姿を見るなと言われていたのに見てしまったので、渕は小さくなり、その家の身上も悪くなった。洗い渕は竜宮に通じているという。

話 名 竜女
資 料 フォクロア 通巻45号
場 所 養老郡 上石津
要 約 昔琵琶湖に住む竜女がこの寺でお産をした。子供は寺に残され、成長して名僧になった。

話 名
資 料 和良の民俗 昭和53年度号
場 所 郡上市 和良村
要 約 9つ頭の竜を祀ったので九頭竜宮という。

話 名 竜神,黒い斑のある牛
資 料 とやま民俗 通巻27号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 雨乞いの時には黒淵でお願いする。ここには竜神がいるとも、黒い斑点を持った牛がいるとも言われ、雨を降らしてくれる。

話 名 竜神
資 料 とやま民俗 通巻27号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 竜神は美女に化け機織の道具を借りに来て、礼に魚を置いてくる。正体を見破られた後は、出現しなくなった。

話 名 竜,隠し神
資 料 美濃民俗 通巻220号
場 所 山県郡 美山町
要 約 夕暮れに女が行方不明になる。下駄が釜の淵でみつかった。女は親の夢枕にたって、「子どもが増えて釜の淵では住めんようになったで、水に乗って出て行く」と告げた。大雨で川が氾濫し、釜の淵から竜が出て行った。竜になった女の話である。

話 名 竜神,白馬
資 料 文化人類学研究会会報 6巻1号通巻6号
場 所 高山市 荘川村
要 約 蛭ヶ野の竜神は、白馬の姿になって化けて出る。竜神は水神でもあるという。

話 名
資 料 民具マンスリー 34巻6号
場 所 加茂郡 七泉町
要 約 竜門寺の、飛騨の匠の彫刻の竜が田畑を荒らしたので、祈祷した。

話 名
資 料 民族 1巻1号
場 所 上保村
要 約 郡上の上保村専龍寺に泰澄大師の杖が成長した桜がある。この桜を泰澄桜という。

話 名
資 料 民族 1巻1号
場 所 武儀郡 下之保村
要 約 武儀郡下之保村の日龍峯寺の山中に千本桧と称する木がある。大昔に山に入って毒龍を征服した両面四臂の異人が携えていた杖と言われている。

話 名 龍ケ雨の雨乞
資 料 旅と伝説 16巻11号/通巻191号
場 所 岐阜県
要 約 小泉村大原の高社山の中腹にある龍ヶ池は、昔から龍が住んでいて水が絶えることが無かった。旱魃のときにも、そのいけをかへどると必ず降雨がある。

話 名 竜,黒い斑のある牛
資 料 とやま民俗 通巻27号
場 所 吉城郡 上宝村
要 約 龍がいるとも黒い斑のある牛の主がいるともいわれる滝がある。その主は、水を自在に操り、雨乞いにも用いられている。

話 名 八頭の龍
資 料 民間伝承 5巻8号
場 所 武儀郡 板取村
要 約 昔、タイチョウ大師が金剛童子を先に立てて、川下の船場というところから上ってきた。龍山でゴマを焚いて「この奥に神はいるか」と問うと、八頭の龍が現れた。「姿を変えよ」というと、十一面観音になった。これが板取の氏神の神体だという。

話 名 龍女,山姥
資 料 美濃民俗 通巻208号
場 所 各務原市
要 約 人々を苦しめていた龍女が与八郎の妻になるが、山姥の姿になっていたところを新蔵に射られ、済度を受けて成仏した。

岐阜県の竜蛇(「怪異・妖怪伝承データベース」より)

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