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白田川
白田川

先に述べたように、片瀬神社はまず「白田川の守護神」として祀られている。水神だ。そして、これは三宅島における片菅命の役割とも一致しているのである。三宅島神着美茂井(みもい)の「カサスゲ様(現・片菅神社)」の伝説を見てみよう。三嶋大神の御子神の「役割」を伝える伝承は多くなく、極めて貴重であるので全文を引用する(現代表記に改めた)。

昔々、島々の神々が神津島に集まり会議をお開きになった。「さて、島々へ水をどのように分配したらよろしかろう。」という重要な相談になったが、利島の神様だけはその時になってもお見えにならなかった。さて、利島の神がお見えになった時には、すでに水の分配の終った後で、わずかに御椀の底が隠れるほどの水の分しか残っていなかったのである。遅れたとはいえ、これではあまりにも薄情と、利島の神は激しくお怒りになり、「これっぱかりの水などいるものか。」といってその水を投げ捨てられた。ところが、その水は三宅島のカサスゲという所に落ちた。そこが美茂井のカサスゲ(カタスゲ)である。よって、この地は今に至るまで清水が湧き出て、涸ることがないという。なお、この故事により利島には今も湧水がないという。
─『式内社調査報告 十』より引用

この泉が今もあり、その脇に祀られてきた水神「カサスゲ様」が、片菅命であろう、とされる[資料1]

はたして三宅島における水神格であった片菅命の役割が、白田川の守護神とされる片瀬の片菅神社まで繋がっているのかどうかは定かではないが、しっかりと頭に入れておかなければならないことだろう。いずれ島嶼と半島の信仰にどれほどの連絡があったのか、という問題への考察がここにも大きく影響してくると思われる。あるいは、伊豆諸島に見る巫女集団を彷彿とさせる下の道祖神像がそのヒントを示しているのかもしれない。

社頭の道祖神
社頭の道祖神

いずれにしても以上のように式内:片菅神社の論社としての片瀬・片菅神社の位置づけは、もと最有力論社なるも、今は早い時期での分霊であると考えられている、という所に落ち着いている。しかし、これも「片菅命を祀ってきたのならば」という但し書きはつく。なんとなれば片菅命を祀ってきたという口承・記録がある訳ではないのだ。中世以来近代まで、ここは「八幡宮」だった。では、今度はその側面を見てみよう。


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[1]:伊豆神社ノオト(一覧)

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龍学 -dragonology- 2011

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