453 隋侯珠

『捜神記』

隋県(湖北省)を流れる溠水のほとりに、断蛇邱という丘がある。

昔、隋侯がこのあたりまで出かけて来たときに、大蛇が傷を負って、胴体のなかほどから断ち切られているのを見かけ、霊ある蛇ではないかと思ったので、家来に命じて薬を塗り包帯をしてやった。すると、蛇はやっと動けるようになったのであった。そこでこの場所を断蛇邱と呼ぶようになったのである。

それから一年あまりたって、蛇が明るく光る珠をお礼のしるしにくわえて来た。珠は直径一寸、純白で、夜になると光を放つ。それは月の光のように明るくて、部屋を照らすことができた。だからこの珠は、隋侯珠・霊蛇珠、あるいは明月珠と呼ばれる。その丘の南には隋の大夫、李良の池がある。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
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