412 脳のなかの蛇

『捜神記』

秦瞻(せん)という男が曲阿県(江蘇省)の彭皇(ほうこう)野に住んでいたが、あるとき、なにやら蛇のようなものが、いきなり脳のなかに闖入して来た。蛇が来る前に臭気がただよったかと思ったら、鼻の穴からはいって、頭のなかでとぐろを巻いてしまったのである。自分ではわんわんうなっているような気がしたが、実際には脳のなかでなにかごそごそ食べている音が聞こえるだけだった。二、三日すると蛇は出ていったが、まもなく帰って来た。手拭いで鼻と口とを縛って防いだが、やはりはいり込まれてしまう。それからなん年もたったが、これという病気にはかからず、ただ頭がうっとうしいだけだった。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
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