347 蛇の孝心

『捜神記』

後漢のころ、定嚢郡(山西省)の太守竇奉の妻が武という男の子を生んだとき、いっしょに蛇を一匹生んだ。奉はその蛇を野原へ行って放した。

その後、武は成長して、天下に名の聞こえた人物となった。やがて母が死に、これから埋葬をしようというとき、弔問客がたくさん集まっているところへ、草むらのなかから一匹の大蛇が出て来た。そして一目散に棺のところまで来ると、そこにうずくまって天を仰いだりうなだれたりしたうえ、頭を棺打ちつけて血涙を流し、いかにも悲しみに耐えないという様子であったが、やがて立ち去った。当時の人びとは、これは竇家の栄えるしるしだと考えたのであった。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
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