282 にしき蛇の肝

『捜神記』

顔含は字を弘都といった。二番目の兄嫁の樊氏が、病気がもとで失明してしまい、医者の処方によれば、にしき蛇の肝が必要だというので、八方手を尽くして探し求めたが、どうしても手にはいらなかった。

含は長いあいだ心配し続けていたが、ある日のひるま、一人で坐っているところに青い着物を着た一人の少年が現われた。年のころは十三、四で、手に持っていた青い布袋を含にさし出す。含が開けて中身を見たところ、なんとそれは蛇の肝であった。少年はあとずさりして外へ出ると、青い鳥に姿を変えて飛び去った。

さて肝が手にはいり、薬が調合された。それを服用すると、兄嫁の病気はすぐになおったのであった。

訳:竹田晃『捜神記』(平凡社ライブラリー)より原文


『捜神記』より
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